シンガポールで生活するにあたり、外国人としてコンドミニアム(通称:コンド)に入居する方が多いかと思います。
「入居」に関しては、下記ページに詳しくまとめましたので、ご覧ください。
入居期間は賃貸契約期間に則りますが、契約満了に際し、契約更新したい場合があるでしょう。
また、諸事情により、早期解約・退去する必要が生じる場合もあるでしょう。
今回は、そのような場合の一連の流れと注意点についてご説明します。
この記事の内容
シンガポールでのコンドミニアム(賃貸契約)の契約更新の手順と注意点
シンガポールでコンドミニアム(賃貸契約)を早期解約・退去する際の手順と注意点
もくじ
シンガポールでのコンドミニアム(賃貸契約)の契約更新の手順と注意点
シンガポールでの賃貸契約ですが、大前提として、オーナーと入居者(テナント)の力関係は対等です。
ただ、日本人の感覚的には、オーナーの発言力は「想定以上に強い」と思った方が良いかも知れません。
「契約社会」ということもありますが、オーナーは「賃貸契約」自体を主軸に置いている訳ではなく、コンドはあくまで「投資物件」で、その運営の一環として貸し出しているスタンスの方が多い為、結構ドライです。
このような背景もあり、入居の際の注意点の一つとして、「オーナーの性格・タイプ」を上げさせていただいた次第です。
シンガポールでのコンドミニアム(賃貸契約)の契約更新の手順
賃貸契約期間は「賃貸契約書(TA = Tenancy Agreement)」に明記されています。
契約更新を希望する場合、賃貸契約書(TA)の記載にもよりますが、通常、「契約満了日から2ヶ月前までに書面にて通知をしなければならない」というのが普通です。
一般的には、エージェントから「更新の意思確認」の連絡をくれるかと思いますが、その連絡がなくても、更新するか、更新しないのか、エージェント経由でオーナーに伝えてもらいましょう。
その際に必要とされる書面(通知書)は、私の経験上は求められたことがありません。
ただ、状況によっては、正式通知書の作成が求められる可能性はあります。
その後、オーナーも契約更新に同意した場合、新しい契約期間の賃貸契約書(TA)を準備し、入居時と同様、締結する流れとなります。
ちなみに、もし、契約更新のタイミングでオーナーにお願いしたいことがある場合、ダメもとで、エージェントに相談してみましょう。エージェントがオーナーにかけあってくれます。
相談内容の一例としては、以下のようなものがあります。
- 家賃見直し(値下げして欲しい)
- 契約期間見直し(更新後に拘束される期間は、初回より短くして欲しい)
- 修理や備品買い足しのお願い
など
エージェントに相談する場合は、更新希望の意思を伝える際に、あわせて伝えましょう。
その希望内容もそえて、オーナーに確認してくれます。
受け入れられた希望内容は、必要があれば、新しい賃貸契約書(TA)に反映されます。
シンガポールでのコンドミニアム(賃貸契約)の契約更新の注意点
前述の通り、オーナーの発言力はなかなかに強く、オーナーの性格にもよりますが、結構ドライです。
その為、あっさりとオーナー側から「契約満了日の2ヶ月前」を目途に、契約終了の通知を受けることがあります。
その理由としては、オーナー自身が住むことになった場合や、コンド転売で状況が変わった場合などがあります。
また、オーナー側が家賃の値上げ交渉をしてきて、その金額を飲むことができず、交渉決裂の結果、更新できなくなる場合もあります。
契約終了自体は致し方ないのですが(入居者側が更新しない場合もある訳ですから)、一番困ることは、その後の短期間で、「退去」と「転居」を一気に進めなくてはならない事態に陥ることです。
オーナーとの関係性が良ければ、引っ越し準備の為、数か月だけ契約延長してもらう交渉は可能です。私も以前、2ヶ月だけ更新してもらったことがあります。
このあたりの交渉はなかなか難しい部分もある為、エージェントを通して、上手く進めてゆく必要があります。
シンガポールでコンドミニアム(賃貸契約)を早期解約・退去する際の手順と注意点
人生の想定プランが急に変わることは、誰にでも起きうることです。
例えば、当初、最低3年はシンガポールで働く前提で、日本本社から海外赴任してきた方が、本社都合により、1年半で帰国する必要が生じる場合があります。
その場合、賃貸契約期間が「2年」であれば、半年前倒しで早期解約しなければなりません。
賃貸契約期間の満了ぴったりで解約できる方が、おそらく少ないのではないかと思います。
シンガポールでコンドミニアム(賃貸契約)を早期解約する際の手順
もし、キリ良く、賃貸契約期間の満了のタイミングで退去する場合は、早期解約ほど複雑ではありませんが、それでも、エージェント経由で正式に通知する必要があります。
もし、賃貸契約期間の満了より前倒しで解約する必要が生じた場合は、賃貸契約書(TA)の「Diplomatic Clause(シンガポール国外転勤等の特別事情における中途解約条項)」に則って、解約手続きを進めます。
「Diplomatic Clause」は「2年契約の場合、14ヶ月以降は解約できる(1年経過後、2ヶ月の通知期間)」というものが一般的です。
手順としては、まずはエージェントへ報告します。
基本的には、オーナーへ通知する為の正式通知書の準備が求められますので、「解約理由」や「解約希望日」などを明記した通知書を作成し、エージェント経由でオーナーに伝えてもらう形となります。
もし、「会社契約」であれば、正式通知書は会社に用意してもらいます。
シンガポールでコンドミニアム(賃貸契約)から退去する際の手順
通知内容が受理された後は、その退去(明け渡し)日に向けて、主に以下の対応を行います。
- 引っ越し準備(明け渡し時、私物は撤去済みである必要がある)
- 部屋の清掃(専門の清掃会社に委託し、証拠としてオーナー側へレシートを提出することが多い)
- カーテンのクリーニング(清掃と同様に、証拠としてオーナー側へレシートを提出することが多い)
- 部屋の不具合の修理(明け渡し時に指摘を受けた場合、高めの修理費用を請求される可能性がある為)
- 水道光熱などインフラサービスの解約(ただし、明け渡し時までは契約を残しておく必要がある)
- インターネット回線など個人契約の解約(ルーターなど返却物がある場合は、明け渡しまでに終えておく方が安全)
退去(明け渡し)日には、下記の引渡し(ハンドオーバー)時と同様、両エージェント立会いのもと、室内の確認を行います。
「家具・備品リスト(Inventory List)」をもとに一つ一つ、返却物を確認し、また、部屋の状態などを確認します。
その場で先方のエージェントから指摘を受けることもあれば、室内の気になる点に関しては、エージェントが写真等を撮って、一旦持ち帰り、オーナーと相談してからフィードバックしてくることもあります。
退去時の「原状回復」が十分ではないと判断された場合、入居時に預けた「保証金(セキュリティ・デポジット)」から「原状回復」に必要な費用をオーナー側が差し引いて、残金を返済する流れとなります。
シンガポールでコンドミニアム(賃貸契約)を早期解約・退去する際の注意点
「Diplomatic Clause」による早期解約通知は、条件さえ満たしていれば、基本的には大きくもめることはないかと思います。
ただ、「原状回復」に関しては、オーナー判断が入る為、調整に難航する可能性があります。
人間が住む限り、どうしても部屋の状態は劣化します。
「経年劣化」と受け取ってくれるオーナーもいれば、「入居者(テナント)の使用上の問題」と判断される場合もあります。
ましてや、契約期間途中でオーナーが交代した場合、契約時の状況を知らないこともあり、最初からあった汚れや不具合について、責任を問われる場合もあります。
「保証金(セキュリティ・デポジット)」の満額ギリギリまで、原状回復費用として請求してくるオーナーもいますので、入居時から不具合の証拠は小さくても残しておき、いつでも提出できるようにしておくことをおすすめします。
入居後1ヶ月以内に「不具合や汚れ等」は写真や動画に撮り、エージェント経由で報告する
「原状回復」でもめた一例として、同僚の退去をサポートした際にオーナー側から指摘を受けた項目をお伝えしますね。
(数十項目の指摘請求があった為、その中から「生活する上で仕方ないのでは」と思われたものを中心に列挙します)
- 物置きにスーツケースを動かしたと思われる床キズがある
- ベランダの床や手すりが痛んでいる
- バスルームの入口の色が変わっている
- リビングに設置しているダイニングテーブル&チェアが一部変色している
- インターフォンの音が聞こえない(これは入居当初からの不具合でしたが、同僚が同意して、修理していなかったものでした)
など
現場検証にも同席しましたが、なかなかの押し込み具合で、両社で原状回復費用の折り合いをつけるまで、かなりの時間と工数がかかりました。
オーナーによって、本当に対応は変わるものだと痛感した次第です。
まとめ
新生活が始まるコンド入居時はスムーズに進んだことも、契約更新時や解約/退去時は苦慮する場合があります。
あまり神経質になりすぎてもいけませんが、少しだけ先のことを見据えて、入居時から想定・注意しておきましょう。
この記事のまとめ
賃貸契約の契約更新希望の有無は基本、満了2ヶ月前までにエージェントに伝える(オーナー側から終了されることもある)
早期解約希望時は、賃貸契約書(TA)の「Diplomatic Clause」に則り、正式な早期解約通知書を提出して手続きを進める
退去時に必要な「原状回復対応」と「自己契約分の解約手続き」は、それぞれ、退去(明け渡し)日にあわせて行う
「原状回復」のレベル感はオーナー判断が入る為、入居時からできる限り、必要な証拠は残しておく(過度な原状回復費用を請求されることを避ける為)