シンガポールの給与やボーナスの支給・天引き方法は、日本とは異なります。
日本でいう厚生年金や雇用保険のような制度(CPF, SDL, CDAC, FWLなど)もボーナス制度(AWS)も、日本のものと大きく異なる為です。
今回は、雇用主も従業員も知っておくべき基本情報をご紹介します。
この記事の内容
シンガポールの「中央積立基金」(CPF)の基本情報
シンガポールの「技能開発税」(SDL)の基本情報
シンガポールの「民族基金」(CDAC, ECF, MBMF, SINDA)の基本情報
シンガポールの「外国人労働者税」(FWL)の基本情報
シンガポールの「ボーナス」(AWS)の基本情報
もくじ
シンガポールの「中央積立基金」(CPF)の基本情報
「中央積立基金」(CPF:Central Provident Fund)は、日本の「厚生年金」と似ている制度です。
ただし、CPFは「積立方式」を取っている為、「自分で年金を積み立てて、自分で受け取る」という形式を取っている点が異なります。
対象者:シンガポール国民 および 永住権(PR)保有者
負担者:雇用主(会社) および 対象従業員
負担額:給与額に対する負担比率は下記参照(通常賃金に対して上限設定あり・2021年8月現在はSGD6,000.00)
納付方法:従業員負担分を雇用主が天引きし、雇用主負担分と合わせて「CPF Board」へ納付する。納付額は各従業員個人の3つのCPF口座(Ordinary Account, Special Account, Medisave Account)に振り込まれ、リタイア後に備えて、「CPF Board」が運営する。
【2021年8月現在】
出典:What are the current CPF contribution rates?
【2022年1月1日以降】
出典:Increase in CPF contribution rates from 1 January 2022
シンガポールの「技能開発税」(SDL)の基本情報
「技能開発税」(SDL:Skills Development Levy)は、日本の「雇用保険」と似ている制度です。
積み立てられた基金は、シンガポール国民 および 永住権(PR)保有者の職業訓練等の補助金として使用されます。
対象者:全従業員 ※一定要件を満たす学生等は除く。
負担者:雇用主(会社)
負担額:給与額に対して0.25%(下限/上限設定あり・2021年8月現在はSGD2.00~SGD11.25)
納付方法:雇用主がCPFとあわせて「CPF Board」へ納付する。
シンガポールの「民族基金」(CDAC, ECF, MBMF, SINDA)の基本情報
「民族基金」(CDAC, ECF, MBMF, SINDA)は、各民族ごとの相互扶助を目的とした基金で、それぞれの民族に属する従業員は毎月の給与から所定額を天引きされ、寄付します。
【中華系】CDAC:Chinese Development Assistance Council
【ユーラシア系】ECF:Eurasian Community Fund
【イスラム教徒】MBMF:Mosque Building and Mendaki Fund
【インド系】SINDA:Singapore Indian Development Association
対象者:シンガポール国民 および 永住権(PR)保有者
負担者:対象従業員
負担額:各民族に応じた寄付金額による
納付方法:従業員負担分を雇用主が天引きし、雇用主がCPFとあわせて「CPF Board」へ納付する。
シンガポールの「外国人労働者税」(FWL)の基本情報
「外国人労働者税」(FWL:Foreign Worker Levy)は、企業がWork PermitかS Passの就労ビザで働く外国人を雇用する場合に納める必要がある税金です。
対象者:Work PermitかS Passの就労ビザで働く外国人
負担者:雇用主(会社)
負担額:就労ビザの種類、業種、熟練・未熟練労働者の別、外国人労働者比率等による
納付方法:FWLは「MOM(Ministry of Manpower)」管轄だが、「CPF Board」が代行徴収する。
シンガポールの「ボーナス」(AWS)の基本情報
シンガポールでは法律上、ボーナスの支給は必須ではありません。
ただ、「AWS」(Annual Wage Supplement)と呼ばれるボーナス制度を施行している会社が多いように見受けられます。
AWSは「13th month payment」(13ヶ月目の給与)と呼ばれることもあり、「1ヶ月分の給与額」を支給するところが多いようですが、支給方法はまちまちです。
雇用日数によって支給の有無が変わってくる場合もありますので(半年以上の雇用後に権利が発生する等)、入社前に詳細条件を確認されることをおすすめします。
まとめ
日本人(外国人)が就労ビザ(EPやS Pass)で働く場合、従業員負担として給与から天引きされるものは、基本的にはありません。
「個人所得税」も天引きされず、年に一度、自ら納税する形となります。(詳しくは下記参照)
【個人所得税】シンガポール居住者の「Income Tax」の基本と納税方法
それでも、CPF等に理解があれば、仕事も同僚との会話もスムーズに進むと思います。
これらの情報が少しでもお役に立てば幸いです!
この記事のまとめ
雇用主が負担するものは、「中央積立基金」(CPF)・「技能開発税」(SDL)・「外国人労働者税」(FWL)と、あれば「ボーナス」(AWS)となる
シンガポール国民および永住権(PR)保有者の従業員が負担するものは、「中央積立基金」(CPF)・「民族基金」(CDAC, ECF, MBMF, SINDA)となる
「ボーナス」(AWS)は企業に対して法的拘束力のあるものではないが、「1ヶ月分の給与額」を支給するところが多いように見受けられる