「出世」という言葉は、サラリーマンにとって魅惑的な言葉ですよね。ただ、私たちの周囲ではどのようにこの言葉は使われているのでしょうか?
「あいつは出世が早い」「自分は出世が遅れている」「早く出世してよ!」とか、何だかよくわかりにくいですよね。そこで出世について、世の中のアンケートなどを見ながら考えてみたいと思います。
この記事の内容
「出世」の正体とは?
あなたは本当に出世したいのか?
どうすれば出世できる?
「出世」の正体とは?
前述の通り、「出世」という言葉は魅惑的に聞こえますが、大変曖昧な言葉でもあります。国語辞典でも「社会に出て高い地位や役職につくこと」となっていますが、特に具体的な役職も書いていない状況です。
また、「あいつは出世が早い」「自分は出世が遅れている」「早く出世してよ!」といった言い回しにも絶対的な意味合いはなく、どちらかと言えば、誰か、例えば会社の同期や、大学の同級生と比べた場合の相対的な意味合いが非常に強い言葉ではないでしょうか?
次に、どのくらいの役職を出世と呼ぶかという点ですが、マイナビフレッシャーズが行った大学4年生向けの調査【新社会人白書2017】では、「どれくらいまで出世したいと思いますか?」という質問に対して、以下のような結果となっています。
- 第1位 部長(18.6%)
- 第2位 執行役員(11.2%)
- 第3位 課長(9.4%)
参考
マイナビフレッシャーズ 【新社会人白書2017】
https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/47610
この結果について、感覚的に実際に社会で働いている私たちと近いのではないでしょうか。大体「出世」という言葉を使うとき、部長や役員を意味することが多いように思います。
ここまでを総合して考えると、社会で多く使われる「出世」という言葉の意味は、あまり絶対的なものではなく、何となく同期や同じ世代の人と比べた場合の、部長や役員に到達するためのプロセス、を指しているように考えられるのではないでしょうか。
あなたは本当に出世したいのか?
次に、世の中の人は出世したのか? ということについてですが、いくつかのアンケートを見てみました。
ほとんどのアンケートが2017年であることはご了承ください。
マイナビフレッシャーズが行った、大学4年生向けの調査【新社会人白書2017】
できれば出世したい(53.7%)
絶対に出世したい(22.7%)
合計 76.4%
株式会社マネジメントベースが行った、25歳から34歳の出世意欲に関するアンケート調査結果
出世したい(17.7%)
どちらかと言えば出世したい(31.9%)
合計 49.6%
エン・ジャパン株式会社の『ミドルの転職』が行った、35歳以上の「出世意欲」についてのアンケート
出世意欲がある(59%)
合計 59%
参考
マイナビフレッシャーズ 【新社会人白書2017】
https://gakumado.mynavi.jp/freshers/articles/47610
株式会社マネジメントベース 出世意欲に関するアンケート調査結果
http://www.m-base.co.jp/colum/index.html
エン・ジャパン株式会社『ミドルの転職』 「出世意欲」についてのアンケート
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2017/10488.html
上記のような結果となっており、かなり前のめりな学生を除いても、50~60%が出世したいと回答しているようです。これを高いというか低いというかは判断がなかなか難しいのですが、海外と比べたらどうでしょうか?
パーソル総合研究所がアジア14ヵ国で行った「はたらく意識」の国際比較調査では、「管理者になりたいか」という質問に対して、何と日本は最下位の14位だったようです。また「会社で出世したい」という質問でも最下位だったようです。ちょっと極端な順位ではありますが、アジアの中ではあまり出世意欲が高くないのは間違いなさそうです。
参考
パーソル総合研究所 「はたらく意識」の国際比較調査
https://rc.persol-group.co.jp/news/201908270001.html
では、次に出世したいと考える50~60%程度の人の意識ですが、先述の株式会社マネジメントベースが行った、25歳から34歳の出世意欲に関するアンケート調査、の結果に大変特徴的な結果が表れています。
この調査では、どういった環境や条件で、最も「出世したい」と思うかを、様々な観点で質問しているのですが、結論から言うと、同期と仕事面や賞与面で差がついている会社で働いている人ほど、「出世したい」と考えているという結果が、顕著に表れています。
つまり、ここから考察できることは、絶対的に出世したいというよりは、人と比べて遅れたくはない、人並みではありたい、という意識の強さが表れているようです。
絶対的な目標があり、例えば「必ず役員になって年収〇〇円稼ぐ! ○○を実現したい!」という人は明確なのですが、単純に他人の目を気にしすぎることは、場合によっては精神的に辛いことにもなり兼ねません。
前に書いた記事「【考察】幸せな働き方について考える。自分らしい選択とは?」でもご紹介しましたが、ポジティブ心理学という、幸福を見える化、する心理学があって、そこでは様々な統計で「幸福」を数値化していますが、人目を気にしすぎる人は幸福度が低いと、明確に示されています。
もちろん、誰かと競争してモチベーションを維持できることは素晴らしいと思いますので、このあたりの心の持ち方が重要だと思います。
今一度、自分は「出世して何かを実現したいのか」「人と比べて遅れたくないだけなのか」を自問自答することで、頭が整理できるかもしれません。
どうすれば出世できる?
では、出世したい人がいて、どうすれば出世できるのか、ということですが、ここでもアンケートを見ていきましょう。
先にご紹介した、エン・ジャパン株式会社の『ミドルの転職』が行った、35歳以上の「出世意欲」についてのアンケートでは、
出世する人に共通する人柄について
- 上司との関係構築が上手 67%
- 周囲を巻き込むコミュニケーション能力がある 65%
- 専門性が高い 17%
出世する人に共通する仕事の仕方について
- 誰かの力を借りるのがうまい 45%
- 物事の課題と背景を理解している 41%
- 高いパフォーマンスを出せる 30%
となっており、専門性やパフォーマンスよりも、上司との関係や周囲との調整力が重要と認識されているようです。これは実際に働いていても感じますし、出世=管理職、と考えると、自分だけが高い能力を発揮してもダメだということになると思います。
また、プレジデントウーマンの『1000人調査! イマドキ「出世と社内政治」は、現実的にどのくらい関係があるのか』、という調査では、
あなたの会社で出世するために必要なものは? という質問に対して
- 社内の利害関係が構築でき、協力者が多いこと
- 社内有力者と関係が密で、話を通しやすくする
- 上司といい関係を保ち、常に気に入られる術を身につける
がトップ3となっており、如何に上司や関係者といい関係を築けるかがポイントであるのは明白です。
参考
プレジデントウーマン 1000人調査! イマドキ「出世と社内政治」は、現実的にどのくらい関係があるのか
https://president.jp/articles/-/39201?page=2
特に、上司との関係については重要です。トントン拍子で出世する人はやはり上司との関係が円滑であるように思えます。所詮判断するのは上司で、上司も人間なので当たり前と言えば当たり前なのかもしれません。
さらには、部下との付き合い方についても、2020年6月にパワハラ防止法も施行されており、今後、部下に対して、より慎重な対応ができる管理職が求められることも間違いありません。
今どきの大手企業では、エンジニアや研究者など、専門職にも日が当たるような人事制度も用意されていますので、一概には言えませんが、仕事のパフォーマンスはもちろんのこと、多くの場合、こういった人間関係の調整力が、出世に大きく関係することは理解しておいた方がよさそうです。
まとめ
出世について、いくつかのアンケートから検証してきました。
出世という曖昧な言葉に惑わされずに、本当に自分が目指すものがあるのか? 出世に関係なく自分は好きなもの(家族や趣味など)があるのか? ということを自問自答してみるのも有効です。
また、仮に特に目標がない場合でも、あまり他人と自分を比べすぎて、自分を追い込むのは幸せな働き方にならない可能性があることは理解しておいた方がいいかもしれません。
もちろん切磋琢磨して頑張ることは素晴らしいことですが、部長や役員に全員がなれるわけではないことも事実ですので、多様な働き方があることを理解することも重要でしょう。
この記事のまとめ
出世という言葉は非常に曖昧であり、かつ、他人と比べた相対的なものであることが多い
本当に出世したいのか? 人に遅れをとりたくないだけなのか? を自問自答してみることは有効であり、あまり他人と自分を比較しすぎてもいい結果にならないことも多い
出世するためのポイントは、上司や関係者との人間関係であることが多い