この記事の内容
クラウドサービスってなんだろう?
クラウドサービスがあるとき、ないとき
クラウドサービスの種類
クラウドサービス利用時の注意点は?
もくじ
クラウドサービスってなんだろう?
【まとめ】ビジネスパーソンが理解すべきITの基礎知識(概要編)で、ビジネスパーソンが知るべき ITシステム導入時の7つのチェックポイントをご紹介しました。
この中でも触れましたが、「クラウドサービス」を効果的に活用することで、企業のシステムは非常に柔軟に運営することが可能です。
特にクラウドサービスを活用することで、システムのパフォーマンス、拡張性の面では大きな効果を発揮します。
では、「クラウドサービス」とはそもそも何でしょうか?
クラウドコンピューティングという言葉は1997年に当時南カリフォルニア大学の教授であるラムナト・チェラッパ(Ramnath Chellappa)氏によって命名されたが当時は普及せず、その後2006年にGoogleのCEOであったエリック・シュミット(Eric Emerson Schmidt)氏がこのコンセプトを再度提唱し広がったと言われています。
ネットワーク上にある様々なコンピューターシステム(ネットワーク、サーバ、ストレージなど)を、サービスとして利用できる提供形態を意味します。
我々IT業界で働く人たちにとって、資料などでは、インターネットはしばしば「雲」として表現されます。
インターネットは無数のISP(インターネットサービスプロバイダ)が網の目のように繋がってできているネットワークですので、利用者にはなかなか実態は分からないという意味でも「雲」という表現が合っているのでしょう。
そういう意味では、世の中でよく使われている「クラウドサービス」という言葉は、「雲の上で提供されているITサービス」という感じでしょうか。実際にそのシステムがどこにどのように構築されて運用されているかは、あまり意識する必要はありません。
例えば有名なGoogleのGmailとかAppleのiCloudとか、そういったシステムがどこにあって、どのように運用されているか意識する人は少ないでしょう。
しかしながら、【まとめ】ビジネスパーソンが理解すべきITの基礎知識(概要編)でも書きましたが、いざあなたが、ITサービスを提供する側(Webサイトの管理者やオンライン販売の責任者など)になった際に、クラウドサービスという存在についてもう少し深く知ることにより、より効率的なシステム作りが可能となります。
いまやITサービスを提供する側にとって、クラウドサービスの利用は必ず選択肢に入る時代になりました。
クラウドサービスがあるとき、ないとき
クラウドサービスを知るうえで、ビジネスパーソンにとっては、まずはそもそも「クラウドサービスがあるとき、ないとき」(551蓬莱の肉まん的にww)で、何が違うのか理解することが有効です。
今でも全てのITサービス提供者がクラウドサービスを選択するわけではありませんので、別の選択肢を含めて知ることは大変重要です。
ここではまず、ある企業がWebサイト(ホームページ)をお客様に提供することを前提に、どのような種類のシステムの作り方があるか考えていきましょう。
① 自社インターネット回線と自社サーバ(最初はここから始まった)
インターネットの黎明期である1990年代前半は、こういった企業がほとんどだったかもしれません。自社にインターネット回線を持っていて、そこにサーバを構築し、Webサイトのコンテンツを設置して公開するパターンです。
このパターンのメリットはやはりサーバを自由に構築できることです。自分で好きなサーバを手配するわけですから何でもできます。ただ、もちろんトラブル時は自分で何とか対応しないといけません。しかもWebサイトであれば夜間でも対応が必要です。
またインターネット回線が昔は細かったので、コンテンツに人気が出れば、回線が埋まってアクセスが非常に遅くなるということもありました。
また、サーバについても、どのくらいのアクセスがあるか予想がつかない場合は、最初からある程度オーバースペックな機器を購入する必要があります。
日本は災害も多く、自社にWebサイトを設置して運用しているケースは、もうほとんどないと思われます。
② ホスティングサービス
さすがに自社サーバは運用が厳しいという風に感じる企業も増えて、専門業者の設備を使おうという流れになってきたのが2000年代前半くらいからでしょうか。多くのホスティングサービス事業者が現れました。
実はホスティングサービスは今でも多くの企業が利用しています。単純なWebサイト(会社概要や事業概要を紹介するだけのサイト)を設置するだけなら、価格も安く非常に使い勝手がいいです。
サーバは事業者が運用してくれますし、回線も事業者が太いものを準備しているので、利用する企業は特に何もする必要がありません。
しかしながらそれでも制約があります。まずホスティングサービスはある程度スペックを標準化することで、低価格を実現しています。
ですので、複雑な機能を利用できないこともありますし、スペックも決まっているので、大量のアクセスには向いていないサービスです。
例えばある会社が、Webサイト上で何か特殊なサービスを提供したい場合や特殊なアプリケーションを使いたい場合(電子決済やオンラインゲームなど)、ホスティングサービスでは対応できないケースもありますし、CMに起用している芸能人の特典ダウンロードサービスなどを始めると、契約しているサーバのスペックではパンクしてしまうかもしれません。
また、ホスティングサービスは事業者側がサーバを運用しているため、事業者側のミスでサーバが停止したり、データが失われたりするリスクはあります。
実際に2000年代中盤に、大手ホスティングサービス事業者の設定ミスで、長期間サーバが停止して、データも失われる事故が起き、ユーザの中には、バックアップを取得していなかった中小企業もあり、大きな問題となりました。
③ データセンターサービス
ホスティングサービスは価格も安く運用も楽なのですが、先述の通り、特殊なサービス(電子決済やオンラインゲームなど、カスタマイズされたアプリケーションを使うサービス)には向いておらず、また、どうしても事業者にコンテンツを預けるので、それを嫌う会社、例えば一部の金融機関などには向かないケースがありました。
しかしながら、自社サーバを自社内に設置すると、設備面や運用面で課題があるため、自社サーバを、設備が整ったデータセンター(IT機器を安全に設置できるコンピューターセンター)に設置する企業も増えました。もちろん今でもこういった企業も多く存在します。
しかも日本は災害が多い国なので、なおさらデータセンターは人気を博しました。
データセンターは基本的には堅牢な設備を提供するサービスですので、設置するサーバは基本的に自社サーバです。ただ、トラブルがあった際にわざわざデータセンターに行くのも大変なので、運用をデータセンター事業者にアウトソースする企業もあります。もちろんコストもそれなりにかかりますので、比較的に大企業のシステムで採用される構成だと思います。
また、折角データセンターに設置するくらいの重要なシステムですから、アクセスが増えたことも想定して、あらかじめかなりオーバースペックなシステムを導入するケースもあります。そうするとさらにコストも高くなるのがデメリットです。
それでもサーバのスペックが不足する場合は増強するのですが、機器の手配に1ヵ月くらいかかかるとしたら、タイムリーに満足度の高いITサービスを提供することが難しくなります。
④ クラウドサービス
これまで見てきた3パターンについて振り返りますと、
ポイント
- 自社サーバ:
自由度が高いが運用が課題。また予め多くのアクセスを想定してオーバースペックの機器を購入する必要がある - ホスティングサービス:
運用が楽だが制約がある。特殊なアプリケーションや大量のアクセスには対応できない可能性がある
という課題があったかと思います。これらを解決できる可能性があるのがクラウドサービスです。
以下のようなサービスがあれば嬉しいのではないでしょうか?
ポイント
- 事業者が提供するサーバだが自由度が高く、自社の好きなアプリケーションを構築可能である。
普段自社が使っているサーバ機能をそのままフルで使えて、制約がない環境で使える、しかもそのサーバの運用は事業者がやってくれる。
- 普段は小さな規模でサーバを借りておいて、アクセスが増えたらいつでも増強できる。そしてまたアクセスが減ればサーバを減らすことができる。
もし何らかのWebサイトのキャンペーンがあるとすれば、その直前でサーバを増強しておき、キャンペーン終了後にまた元の契約に戻すことができる。
いかがでしょうか? 夢のようなサービスではないでしょうか?
そうなんです。これがクラウドサービスのメリットです。ITサービスを提供する側からすれば、今は非常に幸せな時代なのです。
例えばオンラインゲームの会社などは、ゲームがリリースした際は大変多くのアクセスが予想されますが、それを基準にサーバを準備すると、設備投資が大きくなりすぎますが、クラウドサービスを使うことで、可変的にサーバを増減できるのです。
実はこれはWebサイトのような社外向けシステムだけに限ったことではありません。社内で使う販売管理システムや会計システムなどでも、採用の増加や合併などで、利用者が増えることを想定することは大変難しいため、クラウドサービスを利用することで柔軟に対応できるメリットがあります。今多くの日本の企業がクラウドサービスでシステムを構築しているのはこういった理由からです。
ちなみにクラウドサービスのコストですが、様々なメニューと課金体系がありますが、一般的にはホスティングサービスよりは高いです。
クラウドサービスの種類
さて、ここまで、クラウドサービスのあるときとないときについて解説してきましたが、実はクラウドサービスにはいくつかの種類があるので簡単にご説明いたします。
このあたりはあまり深入りすると小難しくなりますので、ビジネスパーソンとしては、何となくイメージだけとらえていただければ幸いです。
SaaS、PaaS、IaaSと3つありますが、SaaSとIaaSの違いだけ分かればビジネスパーソンとしてはとりあえず問題ないと思います。ざっと比較すると以下の通りです。
SaaS (Software as a Service)
特定のアプリケーションがすでに実装されたかたちで提供されるクラウドサービスです。Microsoft365やGoogle Work Space などは代表的で、その他、会計、人事、経費精算など、すでにアプリケーションが準備されていて、申し込むだけですぐに使えるクラウドサービスです。サーバの増強は事業者が勝手に裏でやってくれますので基本的には考慮する必要はありません。
IaaS (Infrastructure as a Service)
こちらはOSまでクラウド事業者が提供してくれるので、そこに好きなアプリケーションを入れて構築するかたちのクラウドサービスです。上記の例で解説した自由度の高いクラウドサービスとは主にIaaSを指します。サーバの増強は必要に応じて管理画面から行うことが可能です。また不要になったサーバの削除も可能です。
PaaS (Platform as a Service)
IaaSからもう少し進んで、データベース管理システムなど、システム開発者にとって便利な環境が実装されているクラウドサービスです。
クラウドサービス利用時の注意点は?
先述の通り、ITサービスを提供する企業にとっては大変ありがたいクラウドサービスですが、注意点もあります。
ホスティングサービスと同じく、サーバの運用は事業者任せなので、事業者がミスをするとシステムが停止します。
また、企業が社外向けシステムだけでなく、企業の生命線である社内向けシステムをクラウド事業者に預ける場合、情報の取り扱いについて繊細にならないといけません。
新製品の開発データなど、自社の機密情報はどこに保管されているのか? 情報漏洩の心配はないか? 事業者のミスで消失したときにちゃんとバックアップは取得しているか? などの問題です。特にデータが保管される国については重要です。クラウドサービスは時に世界をまたいで提供されますが、各国には各国の法律があるため、できるだけ重要な情報は国内に保管しておくことが安全です。
さらには、現在世界で有名なクラウドサービス事業者と言えば、Amazon AWS、Microsoft Azure、Google GCP であり、どれも外国企業です。もちろん日本ブランドのクラウドサービスも沢山ありますが、日本でも外国製クラウドサービスのシェアが高いのが実状です。
これらの外国企業はもちろん一流IT企業であり、データをきちんと管理しているはずですが、米中がIT技術について論争しているように、本当に国益を左右するような情報を外国企業の運用するサーバに置いていいのか、ということは、最後は企業の判断と責任になると思います。
このあたりも単純に他社に流されるだけでなく、きちんと検討の上判断することが重要だと考えます。
まとめ
以上がクラウドサービスの概要となります。あくまでも一般のビジネスパーソンが理解すべき内容ということで、技術の詳細ということではなく、メリット・デメリットを中心にご説明しました。
先述の通り、クラウドサービスにもデメリットもありますので、用途に合わせて選択する必要があります。例えば先にご説明した会社のWebサイトで言えば、
単なる会社概要や事業概要を紹介したWebサイトの場合はホスティングサービス、絶対に他社設備に保管したくない情報や、アクセスにそれほど変動のないシステムなら、データセンターサービス+自社サーバ、という選択肢もあります。
メリット・デメリットを十分理解した上で選定しましょう。
<補足>
上記以外にも、ホスティングサービスでもある程度自由度が高いメニューや、データセンターでも自社サーバではなく、事業者がその企業向けに特別に提供してくれるプライベートクラウドサービスなど、多種多様な選択肢がありますが、まずは今回は基本を解説させていただきましたので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
この記事のまとめ
クラウドサービスを知る際に、他の選択肢との違いを理解しましょう
クラウドサービスには大きく分けて3つのタイプがありますので、用途に応じて使い分けましょう
クラウドサービスを利用する際の注意点を理解しましょう